1. はじめに:生成AIって何だろう?
最近「ChatGPT」でレポートのアイデアをもらったり、「画像生成AI」でイラストを作ったり、といった話を聞くことが増えましたよね。これらは「生成AI」と呼ばれる、最新の人工知能技術の一種です。
生成AIの「生成」とは、「新しく作り出す」という意味。
まるで人間が書いたかのような自然な文章、写真と見間違えるようなリアルな画像、オリジナルの音楽、さらにはプログラムのコードまで、様々なものを自動で作り出すことができるのが生成AIのすごいところです。
スマートフォンやインターネットが私たちの生活を大きく変えたように、生成AIもまた、これから皆さんが生きていく社会や働き方を大きく変えていくでしょう。
しかしその一方で、使い方を間違えると予期せぬ問題を引き起こすこともあります。
今回は生成AIを安全に、そして賢く活用するために、その「無限の可能性」と「潜む危険性」について、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説していきます。
2. 生成AIがもたらす「無限の可能性」
生成AIは日々のタスクを効率化し、創造という点において人間の負担を減らす、まさに「魔法のツール」のような存在です。具体的にどんなことができるのか、身近な例から見ていきましょう。
①文章作成
技術の進歩により、生成AIは人間と見分けがつかない文章を書けるようになっています。
-
レポートや小論文の構成案作成
「〇〇についてレポートを書くから、導入、本論、結論の構成案と、それぞれの章で触れるべきポイントをいくつか教えて」と尋ねれば、骨組みを素早く作ってくれます。 -
読書感想文や物語のアイデア出し
「夏休みの読書感想文で、主人公が成長する物語のアイデアを3つ考えて」や「SF小説の冒頭部分を書いてみて」といったリクエストにも応えられます。 -
SNSの投稿文やキャッチコピーの作成
「新商品の宣伝ツイートを考えて。ターゲットは高校生で、流行りの言葉を入れて」のように、目的に合わせた文章を作ってくれます。 -
メールや手紙の例文作成
先生や友達への丁寧なメール、イベントの告知文など、状況に応じた適切な表現を学ぶこともできます。
実際に「SF小説の冒頭部分を書いてみて」とリクエストした文章
西暦2242年、地球は静かに死につつあった。
分厚いスモッグの層が空を覆い、太陽の光は常に薄明かりのヴェールを通してしか届かない。かつて青く輝いた海は鉛色に変色し、残されたわずかな森は、毒々しい赤や紫に変異した奇妙な植物に侵食されていた。都市は巨大な繭のようにそびえ立つバイオドーム群に変わり、人類のほとんどはその内部で、かろうじて生き永らえている。
俺、カイトは、そんな世界の「外」で生きる数少ない人間の一人だった。もちろん、好きでこうなったわけじゃない。俺の両親は、20年前の「大浄化」と呼ばれるバイオドームへの強制移住を拒み、この荒廃した外界で暮らす道を選んだ。
そして、俺もまた、彼らの血を受け継いでいる。
②画像生成
なんと、「こんなイラスト描いて」とリクエストするだけで、画像の生成すらしてくれるんです。
-
イラストやデザインのアイデア出し
「未来都市の風景で、空飛ぶ車が走っているイラスト」や「かわいい動物キャラクターのデザイン案をいくつか」といった指示で、視覚的なアイデアを得られます。 -
プレゼンテーション資料のイメージ画像作成
発表内容に合う写真やイラストが見つからない時、AIに具体的な指示を出してオリジナルの画像を生成し、資料を魅力的にすることができます。 -
SNSのアイコンやヘッダー画像作成
自分の趣味や個性を表すような、ユニークな画像を生成して、SNSのプロフィールを飾ることも可能です。 -
架空の風景やキャラクターの生成
自分の頭の中にあるファンタジーの世界や、オリジナルのキャラクターを具体的に形にすることができます。
①の文章をもとに「物語内の地球の画像を出力して」とリクエストした画像

③プログラミング
これからの時代重視されるといわれているプログラミングの技能。
その学習サポート、コードを書く補助にもAIは活用できます。
-
簡単なプログラムコードの生成
「Pythonで、1から10までの数字を順番に表示するコードを書いて」と頼めば、基本的なコードをすぐに生成してくれます。 -
コードのデバッグ(間違い探し)
自分で書いたコードがうまく動かない時、「このコードのどこが間違っているか教えて」と入力すれば、エラーの原因を見つけて修正案を提示してくれます。 -
プログラミング学習のサポート
新しいプログラミング言語の基本的な文法を教えてもらったり、特定の機能の実装方法を尋ねたりすることで、学習を効率的に進められます。
④アイデア出し・情報整理
思考のパートナーとして、様々な場面で活用できます。
-
ブレインストーミングの相手
一人でアイデアを考えるのが難しい時、「文化祭の出し物のアイデアを10個、斬新なものから定番まで幅広く出して」のように、AIに様々な視点からアイデアを出してもらうことができます。 -
複雑な情報を分かりやすく要約
ニュース記事や専門的な文章をAIに読み込ませ、「高校生にも分かるように300字で要約して」と指示すれば、ポイントを絞った分かりやすい文章にしてくれます。 -
調べたいことのキーワード提案
レポートのテーマが決まったものの、どう調べたらいいか分からない時、「〇〇について調べるんだけど、どんなキーワードで検索したらいい?」と尋ねれば、関連するキーワードを提案してくれます。 - 人生や恋愛の相談
「この選択で本当に良いのか悩んでいる」「恋愛でつまずいてしまった」といった具体的な相談から、「漠然とした不安がある」といった曖昧な気持ちまで、心の内を整理する手助けをしてくれます。
3. 生成AIがもたらす「新たな危険性」
生成AIは非常に便利ですが、その能力には限界があり、危険な側面も持ち合わせています。知らずに利用すると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
フェイク情報の生成、ハルシネーション
生成AIは、インターネット上の大量のデータを学習して文章などを生成します。
そのため、事実ではない情報や、もっともらしい嘘を作り出すことがあります。これをハルシネーションといいます。
これは、AIが「もっともらしい文章」を生成することに特化しており、その内容が「正しい情報」であるかを判断する機能は持っていないためです。
例えば、「〇〇高校の校長先生の名前を教えて」と尋ねたときに、実在しない人物の名前を自信満々に答えることがあります。生成AIが言ったことを鵜呑みにせず、特に重要な情報については、必ず自分で複数の信頼できる情報源(学校の公式サイト、公的機関の発表など)で情報の真偽を確認する習慣をつけましょう。
著作権・肖像権の問題
生成AIが生成した文章や画像が、既存の著作物と酷似している場合、著作権侵害となる可能性があります。
AIは既存のデータを学習して新しいものを生み出しますが、その過程で学習元の作品に似すぎてしまうことがあるためです。
また、実在する人物に似た画像を生成したり、許可なく個人の写真を使って画像を生成したりすると、肖像権の侵害にあたることもあります。
特に、SNSなどで公開されている他人の写真やイラストをAIに入力して加工する行為は、トラブルの元になりやすいので注意が必要です。生成されたコンテンツを公開する前には、必ず著作権や肖像権に配慮しましょう。
個人情報・プライバシーの流出リスク
生成AIに個人情報や機密情報(例えば、自分の住所や電話番号、学校名、友達の秘密など)を入力してしまうと、その情報がAIの学習データとして利用されたり、意図せず他のユーザーへの回答として表示されたりするリスクがあります。
一度インターネット上に流出した情報は、完全に消し去ることが非常に困難です。絶対に、個人を特定できる情報や、他人に知られたくない情報を生成AIに入力しないでください。学校の課題でAIを使う場合でも、先生や友達のプライバシーに関わる内容は入力しないようにしましょう。
倫理的な問題と偏見
生成AIは、学習データに含まれる偏見や差別をそのまま反映してしまうことがあります。例えば、インターネット上の情報に特定の性別や人種に対するステレオタイプな表現が多く含まれている場合、AIもそれらを学習し、同様の偏見を強化するような表現を生成してしまう可能性もゼロではありません。
AIの生成物を鵜呑みにせず、常に批判的な視点を持ち、生成された内容が差別的でないか、不適切でないかを自分の目で判断することが重要です。
依存と批判的思考力、倫理観の低下
生成AIに頼りすぎると、自分で考える力や調べる力が衰えてしまう可能性があります。特に、宿題やレポートをAIに丸投げしてしまうと、本来身につけるべき知識やスキルが定着しません。
AIはあくまで「道具」であり、最終的に判断し、責任を持つのは私たち人間であることを忘れないでください。AIは思考を助けるツールであって、思考そのものを代替するものではありません。
4. 生成AIとどう向き合うか
生成AIは、これから皆さんが生きていく社会で、ますます身近な存在になっていくでしょう。だからこそ、この新しい技術とどう向き合うかが非常に重要になります。
情報の真偽を見極める力(メディアリテラシー)
生成AIが生成した情報だけでなく、インターネット上のあらゆる情報に対して、**「これは本当かな?」「誰が言っている情報だろう?」「根拠はあるかな?」**と常に疑問を持つことが大切です。
-
情報源を確認する: その情報がどこから来たのか(ニュースサイト、個人のブログ、SNSなど)を確認しましょう。信頼できる情報源かどうかが重要です。
-
複数の情報源を比較する: 一つの情報源だけでなく、複数の異なる情報源で同じ情報が語られているかを確認することで、信憑性を高められます。
-
日付を確認する: 情報がいつ公開されたものかを確認し、古い情報ではないか、最新の情報に更新されているかを確認しましょう。
-
専門家の意見を参考にする: 専門的な内容については、その分野の専門家や公的機関が発表している情報を優先しましょう。
倫理観を持って利用する
生成AIを利用する際は、常に「これは誰かに迷惑をかけないか?」「著作権は大丈夫か?」「差別的な表現になっていないか?」といった倫理的な視点を持つことが重要です。
-
著作権・肖像権を尊重する: AIで生成したコンテンツでも、既存の作品に似ていないか、他者の権利を侵害していないかを確認しましょう。
-
プライバシーを守る: 自分や他人の個人情報をAIに入力しない、AIが生成した情報で他人のプライバシーを侵害しないように注意しましょう。
-
責任ある発言を心がける: AIが生成した文章をそのままSNSなどで公開する際は、その内容に責任を持つ意識が必要です。
AIに「聞く力」と「指示する力」
生成AIを上手に活用するには、的確な質問をしたり、具体的な指示を出したりする「プロンプトエンジニアリング」のスキルが重要になります。
-
具体的に指示する: 「何か書いて」ではなく、「〇〇について、高校生向けに、300字で、箇条書きでまとめて」のように、具体的に指示することで、より質の高い回答が得られます。
-
背景や目的を伝える: 「このレポートの目的は〇〇で、ターゲットは〇〇です」のように、AIに背景情報を与えることで、より適切な回答を引き出せます。
-
繰り返し改善する: 一度で完璧な回答が得られなくても、指示を修正したり、追加の質問をしたりすることで、求めている情報に近づけることができます。
5. まとめ:生成AIは「道具」である
生成AIは、私たちの生活を豊かにして可能性を広げてくれる、便利な「道具」です。しかし、どんなに優れた道具でも、使い方を誤れば危険を伴います。
例えば、包丁は料理を美味しくする素晴らしい道具ですが、使い方を間違えれば怪我をする可能性があります。自動車は遠くまで早く移動できる便利な道具ですが、運転を誤れば事故につながります。生成AIもこれらと同じです。
生成AIを正しく理解し、その危険性を認識した上で、賢く活用していくこと。それが、皆さんがこれからのデジタル社会を生き抜く上で、非常に大切なスキルとなるでしょう。
未来を創るのは、AIではなく、AIを使いこなす私たち人間です。生成AIを味方につけ、新しい時代を切り拓いていきましょう。
最後に
知っておきたい豆知識
私たちのサイト内では、ほかにも様々な「インターネットを使用する際に知っておきたい豆知識」を発信しています!ぜひご覧ください!
特別授業を通じて、子ども達をサイバー犯罪から守る!
私たちは、サイバー防犯ボランティア活動の一つとして、小中高生向けのネットリテラシー特別授業を実施しています。私たち研究会生が実際に学校に赴くほか、オンラインでも実施してます。 また、専門家による保護者向けの講演会も承っています。ご依頼、お待ちしています!