豆知識

「ネットリテラシー」ってどう教えるべきなの?~第三者視点の重要性~

慶應義塾大学 総合政策学部
サイバー防犯教育等研究会
H.M

はじめに

インターネットやSNSの爆発的な普及に伴い、炎上や誹謗中傷といったトラブルをよく耳にするようになりました。普通に生きていれば出会わない、とは言えない社会になってきています。不用意な発言や些細な子供の投稿が火種となって取り返しのつかない事態になってしまう例が近年多発しているのです。

これらの問題に対処するため、情報発信者が第三者視点を育むための教育プログラムを提案しました。また、それらの効果について、慶應義塾大学 総合政策学部
サイバー防犯教育・社会安全政策論研究会が行っているサイバー防犯ボランティアの活動において検証しました。

ネットリテラシー教育における「第三者視点」

現代のコミュニケーションにおいて欠かせないものとなったSNS。
しかし便利なツールの裏側には炎上や誹謗中傷といった、これまでになかったリスクが潜んでいます。

筆者はこういった炎上や誹謗中傷などのトラブルの多くは、自分の発信を「第三者の視点」から客観的に見れないことで起きていると考えます。「この情報を受け取った相手が、どのように感じるのか」ということが想像できず、周囲を不快にさせてしまったり他者を傷つけてしまったりするのです。

第三者視点を獲得し、発信内容を客観的に評価することができるようになれば、炎上やトラブルを未然に防ぎ、安全にインターネットを利用できるようになるでしょう。

現在のネットリテラシー教育

近年日本においては、インターネットリテラシー教育の重要性が周知され、さまざまな取り組みが行われています。
文部科学省は、2022年度から主に高校1年生が使用する教科書に、SNS との付き合い方やフェイクニュースの事例紹介など、メディアリテラシーの学習内容を掲載し始めました。
また、総務省は「インターネットリテラシー・マナー等向上事例集」を公開し、全国各地域での学校や自治体等が主体となった自主的なインターネットリテラシー教育についての取り組みを掲載しています。

一方で、このような取り組みが行われているにもかかわらず、日本の生徒の ICT 活用状況は他国と比較すると、低い水準にあります。特に、学校の授業におけるデジタル機器の利用時間が短く、OECD 加盟国中最下位となっています。さらに、学校外でのデジタル機器の利用状況は、チャットやゲームに偏っており、現状として学習目的での活用が進んでいないと考えます。

また、ネットリテラシーに関する教育についても十分なものが行われているとは言いがたく、インターネットの海には無数の若者の個人情報が漂っています。本研究会においてボランティア授業前に実施するアンケートにおいても、SNSを使用している中高生の数は8割を超えており、小学生に関しても全体の約半分程度と非常に高い水準を示しています。

デジタルネイティブ世代である今の子供たちには「インターネットは底知れない怖いもの」という意識が欠如していること、インターネットを常用してきた世代が親になったことも原因として考えられます。

第三者視点と当事者意識を同時に育む「ロールプレイ」

では、第三者として自分を見つめる視点と、自分もまきこまれるかもしれないと意識して行動する当事者意識はどのようにしてはぐくめばよいのでしょうか。

私たちのボランティア授業においては、それに対する一つの答えとして「ケースなどを用いて、自分が事件の当事者となったと仮定して行う授業」を行っています。

  • 自分事としてとらえることで他者への感情理解能力が成長する
  • 参加者が情報発信者と受け手、双方の状況を体験できる
  • 第三者として事例を見つめる視点を養える

まとめ

本研究の成果は、教育現場での実践に大きな示唆を与えると考えています。

特に、第三者視点を育むためのロールプレイや映像教材の活用は、単なる講義形式を超えた効果的な教育手法です。また、共感性や他者理解を重視するアプローチは、SNSを安全かつ健全に利用する上で重要になります。

この教育プログラムは中学生だけでなく、成人を対象とした生涯教育や企業研修にも応用可能です。特に、職場や家庭でのコミュニケーションにおいても他者視点が求められる場面は多く、デジタル時代の社会全体において価値を持つ教育となり得ると考えます。

インターネットリテラシー教育が進むことで、個々人がデジタル社会の中で健全な行動を取れるようになるだけでなく、より良いオンライン環境を構築する一助となるでしょう。本研究はその第一歩を示すものであり、今後さらなる発展が期待されます。

最後に

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